「熱き死者、夜の訪れ」
Photo by Tetsuro Noguchi

大野美伸

土本ひろき

浜口 悟

南米某国──
ある嵐の夜、一人の男が彼女の家にやってきた。激しい雨と風、加えて車の故障に遭い、身動きがとれなくなった彼女の夫を助けてくれたというのだ。その男の声を聞いたとき、彼女は直感した。

「、、、あの男よ」
「あの男?」
「シューベルトをかけた医者」
「シューベルト、、、しかし君はあの時」
「そう、目隠しされていた。でも、声は聞こえたわ」

それはかつての軍事政権時、彼女を不当に逮捕し、拷問にかけた男だった。その男は、科学を語り、シューベルトに酔いながら彼女の肉体と精神を蹂躙した。復讐心にかられた彼女は、その男を拘束し、銃で脅しながら尋問を始めた。頑なに無実を主張する男、なんとか無事に事を収拾したい夫。三者三様の思惑が激しく交錯し、いきずまる心理戦が繰り広げられる。そして最後に彼女がしかけた罠とは──

「彼が有罪ならなおさら彼を逃がすべきだ」
「私は?私はどうなるの?見てよ、私をちゃんと見て!」
「ああ、見てるよ。君はいまだに囚人なんだ、彼らと一緒に今も閉じこめられているんだあの地下室に」

「君の助けがいる、教えてくれ!私が、、作る、作れるように、君の話を元にして」
「妻をだませと言うのか、私に?」
「無実の男の命を救ってくれと言っているんだ。君は、私の無実を信じているんだろう?」
「私に信じて欲しいのか」
「もちろんだよ。彼女じゃない、市民の声は君だ。彼女は査問委員会のメンバーじゃない、それは君だ」
「確かにその通り、、、どうでもいいんだ、彼女が何を考えてようと」

「だまれ、真実を言うのよ!」
「いや、断る。どうせ君は私を殺す、私が何を言ったとしても、どんな証拠が出てきても。自分を見るが良い、同じじゃないか君を拷問したやつらと。君だって楽しんでたじゃないか。私を銃で打ち据えるとき、トイレで私を辱めるとき」

報復が悦楽へと移行していくサディズム
はたして真実は、、、
いや、真実に意味があるのか

スリリングな展開に反して
人間の本質はジワリと暴かれていきます

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