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ロンダート

エレベーター企画「後瀬の花/安穏河原」

良縁に恵まれ、紙面を拝借する機会を頂いた。せっかくなので裏方の眼を通して見た演劇作品をご紹介したく思う。
エレベーター企画は私が旗揚げから舞監を務めるプロデュース形式の劇団で、シンプルかつスタイリッシュな舞台で「省略の美学」を追求する。
この乙川優三郎原作の2編は、エレベーター企画としては初めての長編時代劇となる。この2編を舞台化するにあたり、大胆にもプラネットホールの舞台、間口12.6m高さ5.5mを10cmピッチの木製格子で前後に寸断する。圧倒的な美しさで設置された巨大な格子は、照明が入ると舞台上に幻想的な影を落とす。この作品においてはこの格子の縦ラインに大きな意味を持たせている。「後瀬の花」では唯一の小道具である[櫛]をイメージさせ、雨のシーンでは舞台間口全体に天上から降り注ぐ雨となり、「安穏河原」では遊郭の格子として用いられる。それはまた絶対に越えられない壁であり、見えそうで見えない、届きそうで届かない、生死の境界線のようにも思える。外輪演出では具体的な舞台美術や小道具を使用せず、役者の所作事も極力簡略化した上で、観客の想像の力を借りて作品を構築する。よって役者にどれだけ表現させるか、観客の想像の手助けをどれだけするかで、観客の理解の度合いが大幅に変わってくる。その匙加減が大変難しい。今回はパントマイム等の所作事をほとんど削除してしまい、最低必要限のト書きを朗読で補い、あらゆる場面を役者の台詞と観客の想像で紡いでいく。観客の想像と視覚の融合で作品は完成する。本来ならば役者の動きはよりシンプルとなり、静と動の対比が際立たせることが更に可能となる。しかし敢えてそれもしない。過剰な説明は一切しないで、観客の想像力を信じ、大胆な省略と削除で作品を構成する。これは非常に勇気が必要な演出で、冒険であり、挑戦である。結果は常に二分する。賛否がはっきり別れるのも外輪演出の特徴だ。外輪能隆の挑戦は果てしなく続く。/塚本修(ロンダート3/25号)

Last Update 16/02/14