Production バーサよりよろしく  "HELLO FROM BERTHA"


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原作: テネシー・ウィリアムズ
訳: 鳴海四郎
演出: 外輪能隆
会場: 利賀芸術公園内新利賀山房
日時: 2000年9月16日
   
利賀サマー・アーツ・プログラム参加JPAF優秀演出家賞受賞
   
Cast

大野美伸

松本喜美子

財田ゆう子

土本ひろき
Note
バーサよりよろしく
利賀サマー・アーツ・プログラム参加 JPAF優秀演出家賞受賞

テネシー・ウイリアムズのリアリズム的世界を、まったく違った視点から切り取り演出されたたこの作品は、JPAF演出家コンクールで「優秀演出家賞」を受賞いたしました。天井から滴りおちる血を思わせる赤い液体が、舞台を、そしてそこに住まう娼婦を染めていく様はまるで、果物が甘美な腐臭を漂わせるような美しい舞台となりました。また、女たちの娼婦の世界と、それを相容れない男の世界を同時並行的に表現し、「世界はモノシリック(一枚岩)ではない」というテーマを強く打ち出した公演でした。

真っ白の舞台が赤く染みつけられていく。その中で奏でられる女たちの不協和音。バーサの白痴のような少女性と狂気、しかしその奥には冷静に自分を見つめる目がある。いっそ狂気に逃げ込めば楽なのに。ゴールディはバーサのその冷徹な「目」を直感的に感じとっている。それにいらだち、時には激しい言葉と暴力でえぐりだそうとする。リーナはこの状況に頓着していない、そのことがこの状況にいっそう不毛感を漂わせている。もうひとつ、この娼館という繭のような世界の外には全く違った世界が広がっている。「チャーリー」と「若い女(劇中では男)」に象徴される「外の世界」とバーサたちの「内の世界」の齟齬感が表現できれば。



Voice
(財)舞台芸術財団演劇人会議「演劇人006」

第一回利賀演出家コンクール
 <利賀演出家コンクール>は、(財)舞台芸術財団演劇人会議により日本ではじめて開催された演出家対象のコンクールです。このコンクールは、二十一世紀に向けて才能ある演出家を発掘し、その表現活動を支援することを目的としています。演出家は舞台芸術作品の中心的な創造者であるにもかかわらず、劇作家や俳優などに比べて育成、評価の機会が少ないという現実があります。今までなおざりにされてきた演出家への支援と顕彰の取り組みを通して、二十一世紀を展望できるような多くの才能ある演出家との出会いの場を創造していきます。第一回のコンクールは下記のような要領で行われ、二名の受賞者が決定いたしました。
■課題戯曲
 <海外戯曲部門>
  テネシー・ウィリアムズ  「バーサよりよろしく」
  フェルナンド・アラバール 「戦場のピクニック」
  サミュエル・ベケット   「あしおと」
 <国内戯曲部門>
  岸田國士 「紙風船」
  安部公房 「棒になった男」(第三景の「棒になった男」)
  別役 実 「マッチ売りの少女」
■応募数
  60人
■審査
 一次審査(書類選考)
  方法:全応募作品について書類、ビデオ等で審査
  時期:6月20日~22日
 二次審査(作品上演による審査)
  方法:「利賀サマー・アーツ・プログラム2000」の一環として
     富山県利賀芸術公園の劇場群にて上演による審査
  時期:海外戯曲部門の上演:8月2日から10日
     国内戯曲部門の上演:8月17日から25日
■審査員
 <海外戯曲部門・国内戯曲部門共通の審査員>
  石澤秀二 (演劇評論家)
  伊藤裕夫 (静岡文化芸術大学教授) 
  鈴木忠志 (演出家・(財)舞台芸術財団演劇人会議理事長)
  高田一郎 (舞台芸術家) 
  森 秀男 (演劇評論家)
 <海外戯曲部門のみの審査員>
  菅 孝行 (演劇評論家)
  越光照文 (演出家・桐朋学園大学短期大学部芸術科演劇専攻助教授)
  安田雅弘 (演出家・山の手事情社主宰)
 <国内戯曲部門のみの審査員>
  衛 紀生 (演劇評論家)
  原田一樹 (演出家/キンダースペース主宰)
  宮城 聡 (演出家/ク・ナウカ主宰)
  山内武善 ((財)静岡県舞台芸術センター芸術局長)
■結果
 最優秀演出家賞:ペーター・ゲスナー氏(上演作品:「紙風船」)
 優秀演出家賞 :外輪能隆氏(上演作品:「バーサよりよろしく」)
(財)舞台芸術財団演劇人会議「演劇人006」より
 
 真っ白の舞台が赤く染みつけられていく。その中で奏でられる女たちの不協和音。バーサの白痴のような少女性と狂気、しかしその奥には冷静に自分を見つめる目がある。いっそ狂気に逃げ込めば楽なのに。ゴールディはバーサのその冷徹な「目」を直感的に感じとっている。それにいらだち、時には激しい言葉と暴力でえぐりだそうとする。リーナはこの状況に頓着していない、そのことがこの状況にいっそう不毛感を漂わせている。もうひとつ、この娼館という繭のような世界の外には全く違った世界が広がっている。「チャーリー」と「若い女(劇中では男)」に象徴される「外の世界」とバーサたちの「内の世界」の齟齬感が表現できれば。
外輪能隆
「バーサよりよろしく」劇評  「演劇人006」より抜粋
──「バーサよりよろしく」は、娼婦バーサのけばけばしく乱雑な部屋での出来事である。しかし、演出の外輪能隆は戯曲の指定をすべて無視し、最低限必要かとも思われるベットさえ使わなかった。白い布を敷きつめたリングのような舞台をつくり、病気で半ば狂気に憑かれているバーサをそこに横たえたのである。
 娼婦の女あるじゴールディは、稼がなくなったバーサを持て余し、はじめは優しげに病院に行くことを勧めるが、バーサの激しい反撥につれてしだいに威圧的になり、二人の衝突は暴力性を帯びてくる。バーサは妄想のなかの愛人チャーリーに宛てて、出されることのない手紙を書こうとするが、その口述筆記を頼まれたリーナはまったく無関心で、途中で書くことをやめてしまう。
 演出家は劇の始まりから赤い血のような滴を舞台に落とした。最初にバーサの下腹部を濡らした赤い染みは、劇が進むにつれて舞台全体にひろがっていくが、同じように白い薄手の衣装の三人の女のなかでいちばん赤く染まるのはバーサ、つぎがゴールディで、リーナはほんの少ししか濡れない。この処置は閉ざされた世界に住む三人の位置関係、そこから生まれる不協和音を鮮やかに見せた。
 戯曲には、バーサの部屋をチラッと覗いて消えるだけの若い女が二度登場する。演出は外の世界を象徴するこの人物を背広を着た若い男に変え、二度だけ舞台に入ってくるほかは、舞台の周囲を歩き回る存在にした。この男は女たちの行動とはまったく無関係に煙草を吸ったり、カメラを取り出したりするし、音響効果としての蓄音機をかけたり停めたりもする。そのことで舞台の内側の世界を異化する効果をあげていた。
──「バーサよりよろしく」は、テネシー・ウィリアムズの繊細な、はかなく消えてしまう情感を描いているわけだけど、外輪氏はその消えていくものから強烈なエネルギーを表現したわけですね。そういうところが独特な演出なのであって、作家が演出したらああいう意外性は出せない。
──外輪能隆氏の「バーサよりよろしく」は、テネシーウィリアムズの魅力的な細かいト書きがあるにもかかわらず、シンプルで独自な空間を造形していた。舞台一面に敷かれた白布が芝居の進行とともに上から滴る水で赤く染まっていく。俳優の白い衣装も徐々に赤く濡れ肌まで透けていく。まったく予想外のものでしたが、戯曲の持つ雰囲気にぴったりだと感じました。

 

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Last Update 16/02/14